メールマガジン第134号>稲田顧問

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★【稲田顧問】タツオが行く!(第90話)

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「これまでのタツオが行く!」(リンク

90.二拠点居住

 

 2017年の4月1日に山佐木材に赴任してから、この3月31日で丸9年が経過したことになる。その間、月始めの2週間は鹿屋市、後半の2週間は横浜市と、生活拠点を二箇所持つ生活を続けて来た。移動は原則月2回(往復1回ずつ)で交通費は勤務先である山佐木材から支給される。首都圏から鹿児島に行くのは結構な大旅行であるが、月に2回それができるのであるから、旅行好きの僕にとっては大いに幸せなことである。

 

 最近「二拠点居住」という言葉をよく耳にする。「二拠点居住」とは国土交通省が推進する施策の一つであって国土交通省作成の資料を見ると

 ・地方への人の流れの創出・拡大を通じて地域の活性化を図る

 ・そのため、二地域居住者向けの住まい・なりわい・地域住民との交流のための環境整備等を行う

と記載されている。

 その具体化のため令和6年11月に、「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律の一部を改正する法律」が施行された。この法律の意味は今一つ分からないが、二拠点居住が国家の推進する大事業であることは間違い無さそうである。さらに国土交通省の資料を読み進めると、

 ・主な生活拠点とは別の特定の地域に生活拠点をもうける暮らしの促進

 ・都市部の過密を避けつつ、国土全体の多様な自然資本・文化資本を活用し、国際競争力のさらなる強化

 ・多様なライフスタイルの実現を通じたウェルビーイングの向上、新たな暮らし方や新たな働き方の実現、新たな学びの機会の創出

等が盛り込まれており、単に2箇所に住まいがあるというような簡単なことでは無さそうである。

 

 「二拠点居住」という言葉を最初に意識したのは数年前の日本建築学会大会の研究集会で、ゲストとして参加されていた京都大学元学長の山極寿一先生の講演を聞いた時である。山極先生は霊長類(特にゴリラ)の研究者で、自然との関わりを特に重視した講演だったと思う。私のようなシティーボーイ(勿論冗談だが)とは本質的に観点が異なる講演で、大変興味深く聞いた記憶がある。

 ・多様なライフスタイルの重要性

 ・都会の利便性と田舎暮らしによる自然との関わりの両立による幸福感の向上

等が講演の要旨であったと思う。

 講演の後、出席された多くの先生たちから「今の君の生活は二拠点居住だね」などと言われたのであるが、当時の私としては「少し違うような気がします」と応えた記憶がある。なぜ少し違うと感じたのかというと、私の鹿屋の生活は基本的に田舎暮らしでは無いからである。朝7時頃に家を出て車で会社に向かう。会社での仕事は基本的にオフィスワークであって、横浜の生活と変わるところは無い。基本的に鹿屋の自然や固有の文化との触れ合い等とは無縁なのである。

 

 山極先生の「二拠点居住」は自然との触れ合いを伴う田舎暮らしを前提としているような印象であった。田舎に来れば農作業をするとか、地域固有の産業に従事する等、都会ではできない仕事に従事し、その地域に貢献することが前提であったように思う。

 しかし鹿屋は実際には10万人近くの人々が居住し、都市部と同様の利便性が享受できるという意味でかなりの大都会である。バイパス等にはユニクロ、ヤマダ電気、ABCマート、無印良品などの大型店舗が立ち並び、不自由を感じることは殆ど無い。つまり鹿屋における僕の暮らし方は、田舎暮らしではなく、地方における都会暮らしであり、その実態は横浜の生活とあまり変わりはないのである。

 しかし、そのようなよく分からない生活も気が付けば9年も続けてきたことになる。この5月には私も後期高齢者の仲間入りである。ここはあまり難しいことは考えず、鹿児島の豊富な食材と休みの日には温泉等の観光資源を楽しみながら、やれる所までやってみようと思う昨今である。

(稲田 達夫)