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★【西園顧問】木への想い ~地方創生は国産材活用から(4)
「木材利用と介護保険」
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シリーズを書き始め4回目だが、1回目の「日本でも木造消防署建設を」PJの提案は、「木は火に弱いとの誤解と、防火対策への認識の見直し」への提案だった。
2回目「奄美での山佐木材の防蟻性能野外試験の報告」は、木材保存対策とエビデンス確認のための野外試験の重要性をレポートした。
3回目「重要文化財の入来旧増田家住宅」は「日本は木の文化の国」で、在来木造は『和の文化』の代表の一つだから、日本人は「もっと和風木造住宅を街造りに活かせないか」との思いの発言だった。
今回4回目は、前回までのタイトル副題「独り言」を、「地方創生は国産材活用から」へと進化させ、「木材利用と介護保険」を取り上げてみる。次回5回目は「世界文化遺産と木材利用」で書く計画で、私は毎月のシリーズを通し木材需要拡大と地域振興活性化への話題提供が出来ればと思っている。
実は私は20年前まで長年木材業界で働いていたが、事情が有り、他業種へ転向した。そして介護保険制度が始まる平成12年直前に福祉用具業界へ移籍し、昨年まで介護保険対象の福祉用具事業界に15年間携わって来た。その経験を参考にして、木材需要拡大との関係を述べてみる。
介護保険制度に「住宅改修の費用支給制度」がある。地方の高齢者の住宅は戦後建築された古い住宅が大半で、床高の在来木造が多いから移動補助や転倒防止等が基本的な介護支援対策とも言える。20万円以内の住宅改修費は、その費用の1割を自己負担すると施工出来るから、安い負担で効果の大きな支援対策である。(別途に市町村によっては、高齢者住宅改修支援制度として60~100万円の間で、その2/3を補助する制度も有るので、事前に確認をする事)
「玄関や廊下やトイレ等での手摺設置」施工例が多かったが、もとが木造住宅だと改修が容易で、高齢者の必要とする場所へ設置し易いから効果も大きい。
所が当初は「丸いスチール製に樹脂被覆した商品」が使われていた。当時新参者の私が「何故冷たい感触のスチール製を使うの?」と質問すると、「年寄を支える強度が必要で、コストも安い製品を使う」と経験豊富な職場先輩の答えだった。
私は「3尺(90cm)毎にブラケットを使うのなら強度の心配は無い。木製丸棒手摺は木造住宅の雰囲気に合致するし、人々に肌触りの良さを感じさせるから、木製丸棒の手摺を提案してみようよ」と話した。
すると「木製丸棒の材料代は約5割も高い。強度も不安だ」と、新参者の私は如何にもコスト感覚に乏しいと言わんばかりだった。
そこで私は「高級和室には木製部材を使用するのだから、出来れば木材を使いたいと思う人は多いはずだよ。」更に「工事代の内訳は手間代8割で、材料代の2割が5割高だとしても、トータルコストは1割しかアップしない。木材の持つ長所まで総合的に考えれば、その程度のコスト高なら日本の高齢者達は、木材を選ぶ人が多いと思う。
屋外や浴室では耐久性能を考える事必要も有るが、介護保険制度は自己決定が原則なのだから、室内用は事業者側が一方的に決め打ちせずに、両案を提案し利用者に選ばせたら」と提案させてみた。
介護保険制度は費用1割を自己負担する制度だから、工事費の実質個人負担の差額は更に小さくなる。
提案に高齢者達は「その程度の負担なら木製が良い」と選択する人が増え、瞬く間に木製手摺が主流となっていった。他の事業者も追随する事となり、この傾向は鹿児島から全国へ瞬く間に広がっていった。
すると丸棒供給業者が増産する事で仕入コストは安くなった。1軒だけの木材使用量はわずかでも、現在の全国の木製手すり総需要量は相当な量となっている。
手摺の木製化に続き、古い住宅の玄関の段差解消用踏台は、微妙な現場寸法合せが必要だから、身近な国産材の採用例が増えて来て、その利用量も馬鹿にならない。
小さな部材でも、他材料から木材需要へ取り戻す細かな努力の積上げは、合計すると馬鹿にならない木材利用分野の復活につながっている。
介護保険制度の経験では、木造住宅は改修が簡単で、施工コストの低下につながった事や、鉄骨系プレハブ造やRC造建物の施工では苦労し、結果的に費用高になった経験が多い。
最近の若い後輩達と話すと「15年前は、室内手摺に木製品を使用しなかった時代も有るのですか。」と怪訝な顔をされる。時代は変えるのも早いが、風潮を一度定着させると標準化させるのは難しく無いと言える。
日本の高齢者は木造住宅が好きな人が多く、体に良い環境材料である事も知っている。要は需要拡大には利用者が満足する商品を提案する事が重要で、木材の人に馴染み易い特性を小まめに提案する事が、地材地消として木材の需要拡大のポイントと思う。
(西園)