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★【シリーズ】設計事務所さん、こんにちは!
株式会社 山田憲明構造設計事務所様(東京都品川区)
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今回は、初の構造設計事務所さんの登場です。
株式会社 山田憲明構造設計事務所の山田憲明社長にお話をお伺いしました。
Q1 スタッフの皆さまをご紹介ください
弊社は2012年4月設立で、現在4人の技術スタッフがいます。ほとんどが信頼申し上げている方々からの紹介ですが、私が独立したのを聞きつけて入社を志望してくれたスタッフもいます。ユニークな経歴・人柄・スキルを持った個性豊かな人間ばかりです。年齢順に紹介させていただきます。
◇私こと山田憲明は、大学卒業後すぐに木構造やPCa構造を意欲的に取り組んできた増田一眞先生が主宰する増田建築構造事務所の門をたたき入社させていただきました。チーフエンジニアとして15年勤めた後、2年前に独立させていただきました。
◇蒲池健(かまちけん)は、東大の安藤直人先生・稲山正弘先生の研究室出身で、2013年3月まで東大アジア生物資源環境研究センターの特任助教として木質構造の研究をしつつ、これまで稲山先生の実施プロジェクトを数多く担当させてもらっていました。木質構造に対する造詣が大変深く、皆いつも教えてもらっています。
◇杉本将基(すぎもとまさき)は、東大内藤廣先生の研究室を出て、高名な構造家の岡村仁さんの事務所で8年間修業した後、組織設計事務所を経て入社しました。さまざまな構造の実務経験が豊富で、他のスタッフからもとても頼りにされています。
◇古矢渉(ふるやわたる)は、慶応大学の故野口裕久先生のもとで構造解析等について学び大学院終了後、世界的なバネメーカーであるドイツのMUBEA社で3年ほど技術開発を担当していました。建築構造の仕事は初めてですが、前職のスキルを活かして様々な設計技術を吸収しつつあります。
◇林弘倫(はやしひろつぐ)は、2013年3月まで東大の藤田香織先生のもとで五重塔などの研究をしていました。研究に実務経験を活かしたいという考えのもと、現在は博士課程を一時休学して実務に日々励んでいます。社内では得意とする社寺建築等の伝統木構造だけでなく、先進的なプロジェクトにも意欲的に取り組んでいます。
皆、将来は独立を目指しており、私も皆が独立した研究者・実務者として活躍していくことを望んでいます。
Q2 これまでのお仕事で印象に残った建物をご紹介ください
事務所設立後間もなく、弊社の名前でやらせていただいているプロジェクトは、まだほとんどが設計・施工段階ですので、私が増田建築構造事務所時代に担当した中で印象深い建物を紹介させていただきます。
◇大洲城天守(三宿工房、竹林舎、前川建築研究室/2004年)
4階建の城天守閣の復元で、太い柱梁を伝統的仕口で組んだ構造であるため、木材のめり込み特性を生かした半剛節ラーメン構造として設計し、実験的研究をしながら実現しました。
◇西袋中学校体育館(保坂陽一郎建築研究所/2003年)
アリーナの30m×35mの無柱空間を、屋根のかたちに楕円面という曲面を採用し、部材にスギ4寸角を束ねた重ね梁を用いて実現したプロジェクトです。自分の想像と経験を超えるスパンのプロジェクトであったため、ジャッキダウンまで眠れない日が続きました。
◇レストランアーティチョーク(柳澤孝彦+TAK建築研究所/2004年)
カラマツ小径木を籠のように組んだ軽井沢の湖畔に建つ木造レストランです。設計も施工も極めて難易度の高いプロジェクトで、建築家や施工者と一体的に検討しながら実現しました。
◇国際教養大学図書館棟(仙田満+環境デザイン研究所/2008年)
多くの賞を受賞し、私が携わった中では最も有名な建築です。1.5mもの積雪荷重、半円形平面と階段状断面を有するコロセウムのような空間といった特殊な計画条件に対し、スギ小中径材(4.5~6寸角)を組み合わせた二重合成梁と鉄骨フィーレンディール梁で構成した和傘のような放射状の構造です。
◇東北大学大学院環境科学研究科エコラボ
大学が所有するスギ材を構造に使った建物で、これらのスギ材が使えるようダブル梁・方杖・掘立柱などを用いた「組立式木造ラーメン構造」を考案し、実現しました。
◇弊社設立後に携わったもので印象的なのは、建築家の泉幸甫先生に初めてお声かけいただき構造設計及び監理をさせていただいた山口県某史料館の木造平屋の建物です。
アーチとトラスが3次元的に複雑に組み合わさった構造で、設計上も施工上も非常に難易度の高いものであったため、木工事を山佐木材さんにお願いしました。山佐木材さんには施工図のやり取りを通じて多くのご示唆・ご提案をいただき、昨年末に無事上棟することができました。加工や建方の精度もとてもよく、関係者一同感謝しております。
Q3 木造建築物の構造のお仕事が多いようですが、’木造’の大変なところはどんなところですか。
まず木材は荷重に対して折れたり割けたりといった脆い破壊をしやすいという性質があるので、大きな地震が起こった時にそうした損傷が生じないよう、構造設計では細心の注意を払う必要があります。
また、弊社では様々な理由で集成材よりも製材を使うことが多いのですが、製材は乾燥に時間がかかる上、乾燥収縮による寸法変化が大きいので、それらを考慮した工程・メンテなどを踏まえて計画しなければならないのが難しいところです。
更に製材は太さも長さも限られていますので、大スパン建築では小さな部材を細かく繋ぎながら強く美しい構造になるよう計画していくことになりますが、様々な性能を考えながら構造の「素材」「かたち」「接合」を決定していくのは総合的な視点が必要で、何度も検討を繰り返す骨の折れる作業です。
Q4 逆に おもしろいな と思われるのはどんなところですか。
他の構造では考えられないほど、素材・接合・施工法が多様であり、それらによってつくられる構造は無限に考えられるところです。木材は鋼材にくらべれば構造材として弱点も多く、設計に配慮がより必要ですが、逆に太さや長さに限りのある一見不自由な材を設計者や施工者の知恵や工夫によって建築という大きなものをつくりあげていくところに醍醐味を感じます。
また、木の架構をあらわしにして美しい空間をつくることができるのも、とてもやりがいを感じるところです。
Q5 山佐木材の印象をお聞かせください。
以前から素晴らしい木造建築をつくり続けていらっしゃるのを拝見していて、いつかご一緒させていただくのを楽しみにしておりました。今回初めて一緒にお仕事をさせていただきましたが、豊かな経験と高い技術に裏打ちされた懐の深さを感じました。設計者の意図を酌みつつ、的確な示唆をいただきながら構造を洗練させていける良好な関係を築けたように思います。
株式会社山田憲明構造設計事務所
代表取締役 山田憲明