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★【連載】やまたすく通信(3) 岐阜県立森林文化アカデミーで講師をしてきました
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本州を東から西へと異例の進路をたどった台風12号を横目に見ながら、岐阜県美濃市に校舎を構える岐阜県立森林文化アカデミー(以下、アカデミー)に行ってきました。今回はそのアカデミーの様子をご紹介したいと思います。
アカデミーは森林・林業・木材・地域に関わる人材を育成する県立専修学校です。その前身は1971年に開校した岐阜県林業短期大学校と歴史が長く、近年乱立している他府県の林業大学校とは少々趣が異なります。高卒程度の方を対象とする「森と木のエンジニア科」、大卒・実務経験者の方を対象とする「森と木のクリエーター科」の2学科で構成され、他府県の林業大学校が主に対象とする現場の担い手育成ばかりでなく、森林経営、森林環境教育、構造・温熱・木材、木工の各専門家を育成することを志向しています。
詳しくはこちらをご覧ください。https://www.forest.ac.jp/
私自身は2012年から非常勤講師のお仕事を頂いており、ここ数年は年1~2回、クリエーター科の森林経営を専門とするコースの方を対象に、林業事業体の経営管理、財務会計・管理会計、組織管理に関連した講師の依頼を頂いています。
そんなアカデミーに前泊で入りました。アカデミーは、敷地内に外部からの学生や外部講師が宿泊することのできるコテージを備えています。浴室・トイレ付の個室部屋があり、大変充実した快適な設備。なかなかここまでできる林業大学校は他にはないのではないでしょうか。当日は日付も変わったくらいに入りましたのですぐに眠りにつきました。
翌朝はいつもどおり6時過ぎには起きて、コテージ周辺を散策。アカデミーは林業大学校の中でも珍しく(唯一?)、学内に演習林を持っています。演習林だけでなく、校舎周辺は豊かな樹木に囲まれており、朝の散策も心地よいものでした。散策していると森に溶け込んだような「森のインターチェンジ」という名の展望台がありました。こちらはアカデミーの学生さんの自力建設によるもので「JAPAN WOOD DESIGN AWARD 2016」を受賞したとのこと。実践に重きを置いている様子がうかがえますし、それをリードする先生方に脱帽です。
散策後、中部東海名物の喫茶店でのモーニング(写真を取り忘れました、残念!!)を済ませて、いよいよ本題の講義開始です。今回の受講者は、アカデミーの学生さんではなく、豊田森林組合・豊田市の職員さんが対象でした。今回はこの位置づけがとても勉強になりましたので、後で整理したいと思います。
さて、その講義内容ですが、当初丸2日間のうち1日を頂き、林業事業体の会計の基本や損益分岐点といった収支目標の設定、それに基づく林業事業体のビジネスゲームに取り組んで頂きました。鹿児島大学で開発させて頂いたプログラムで、林業機械や雇用数、人件費等を設定した林業事業体を経営する肌感覚をもって頂くことが目的です。また、事業体の収支と間伐を行う事業収支を見比べることで、事業体経営と、搬出間伐の事業収支の違いを理解して頂きました。
受講生からは、「組合の収支と山主への精算の両方をみながらプランを作るのは初めてで、非常に参考になるものでした。」「各事業、組合全体の収支内容がわかりやすく、今後につなげていきたい。」といった前向きなコメントを頂きました。こちらこそ、拙い進行、説明にも関わらず、ありがとうございました。
最後に、今回のこのプログラムの位置づけについてですが、豊田森林組合と豊田市、アカデミーの人材育成に関する連携協定に基づくものでした。
(連携協定についてはこちら:http://www.city.toyota.aichi.jp/topics/1023257/1023255.html)
この連携協定は、豊田市の「新・豊田市100年森づくり構想」という基本方針に基づくものとのことで、
(http://www.city.toyota.aichi.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/024/463/koso.pdf)」
旧豊田市と周辺の山間部地域の市町村合併をきっかけに2007年3月に市としての森づくりの基本理念、市・森林所有者等の責務や役割、基本的施策の考え方を示した「豊田市森づくり条例」を制定し、活動を進めてきたとのことでした。実は、私自身、2007年3月時の「豊田市100年森づくり構想」策定時には、ほんの少しだけですが事務局サイドで関わっており、何度かこの委員会の末席に座らせて頂いておりました。10年以上経ち、巡り巡って今回関わることができたことを大変嬉しく思いました。
この基本方針を紹介するHPでも、「市の森林の半分近くを占めるヒノキ・スギの人工林に対して、緊急的な間伐を進めるとともに、将来目標とする森林の姿を目指した森づくりを行います。また、適地において木材生産を進め、中核製材工場の稼働を契機に地域材利用を活性化させ、これらを担う人材を育成していきます。」とあり、今回はこの一連の流れの中での人材育成研修でした。
以前のメルマガにも書きましたように、今後「森林経営管理法」「森林環境税(譲与税)」が動いていく中で、「効率的かつ安定的な林業経営を行う能力」や「経理的な基礎」を有する「意欲と能力のある林業経営者」と連携し、市町村が主体となって動くことが求められていると考えます。また、森林環境税の使途として、人材育成の内容まで含まれています。市町村として、森づくりの基本方針や構想(ゾーニング含む)、実行する根拠として条例を作り、実行部隊の人材育成まで落とし込む。その育成内容をアカデミーのような人材育成専門機関と連携する(しかも、今回の内容は事業体経営、会計、事業地確保と収支管理といった経理的な基礎の内容)。まさに、お手本のような自治体による林野行政を進めているのではないでしょうか。ぜひ一度上記HP(http://www.city.toyota.aichi.jp/shisei/gyoseikeikaku/sangyo/1024463.html)にアクセスしてみて頂ければと思います。
(新永)