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★新年のご挨拶 代表取締役 佐々木 幸久
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新年明けましておめでとうございます。
昨年も大変お世話になり、誠に有り難うございました。
今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
林業、木材産業、木造建築において今年もまた大きな動きがありそうです。年初にあたり昨年からの動きを含めて、今年私が特に重要と考える事柄を上げてみることに致します。
1.CLT建築の本格化
昨年はセンチュリーハウス様のアパート(鹿児島県姶良市)が建設されました。3階建て、12戸、建築面積660m2=200坪と手頃で、建設は比較的スムーズにいったと聞いています。また建設工事費用についてもCLTを使ったことで特に高額についたとも聞いていません。
ほかに、森林総合研究所九州支所共同特殊実験棟や、九州森林管理局西都森林管理署などの国の施設、JR九州の施設などの案件が計画され、建築中です。
中でも先般起工式があった三菱地所様の「下地島空港旅客ターミナル工事」は、出発ラウンジ棟、チェックイン棟の天井にCLTを使うもので、完成予想CGを見ると、その規模といいデザインといい圧倒的で、完成後供用開始されれば話題沸騰することは間違いありません。
一方全国的なCLTの供給体制として、今年春には愛媛県スナダヤさんのCLT工場が稼働を始める予定と聞いています。その規模も銘建工業さんに並ぶ二つ目の大規模工場で、供給体制は随分強化されるだろうと思います。同時に需要の伸びは供給力の伸びと連動して大きく伸びるかは不分明で、我々メーカーとしては需給バランスに注意を払う必要があります。
2.新しい木材利用技術の始動
オリンピックの国立競技場が、言わば衆人環視の中で木造になったことで、話題は建築業界の中から飛び越して社会的なものとなりました。「木造建築」が社会的に認知される一つのきっかけになったかもしれません。また「海外では高層木造建築が盛んに建っている」ということが、広く知られてきました。
九州佐賀市に本社がある松尾建設様では、本社ビル建て替え建設に際し、6階建て鉄骨ビルの床に木材(CLT)を採用することになりました。オーナーである前会長さんが「九州初の技術を九州で最初に使いたい」とおっしゃったそうです。床施工見学会は空前の賑わいだった模様で、鉄骨ビルに木床という新しい建築様式のスタートを予見させてくれます。
このビルに木造の低層ビルが併設されますが、こちらもデザイン、構造共に新しい主張が盛り込まれていて、見栄えのする建物になると予想されます。同社は九州の木造建築のメッカになることでしょう。
床の2時間耐火認定については、既に当社で取得済みで、松尾ビルでもこの認定を使いました。しかしこの際の仕様以外に様々なニーズがあって、当社は3社と連携して、今年から来年に掛けて三者三様の耐火認定を得るべく取り組んでいます。
SAMURAI集成材による建物が、個別大臣認定により当社工場内に建ちました。これで実績として2棟目です。同材料、同構法は長スパンの建設にも適しますが、同時に梁背の縮小に貢献できるので、木造多層化には極めて有効といわれています。
今年はこれの一般的利用に道筋をつけたいと願っています。
3.TPP、EPAの大枠合意
我が国とEUとの経済連携協定(EPA)が大枠合意したと発表されました。アメリカは抜けたもののTPP(環太平洋パートナーシップ)も同様と聞いています。 構造用集成材や木材(集成材用ラミナ)が関税撤廃の対象であり、高率関税というわけではないのですが、数百円単位で価格を争っている業界であり、影響が大きいと、一昨年末は業界の一員として関係先を方々回りました。
関係者のご尽力のおかげで、関税については「即時撤廃」から「段階的撤廃」となり、これから長期にわたって競争力向上に努めるべきことが示されました。当社でも輸入材からは比較的遠いマーケットにいるとはいえ、厳しいコスト環境にあることは間違いなく、生産性向上に取り組むべき1年となりました。
4.働き方改革と時間外労働の規制
最近残業を含む時間外労働の規制が強化されました。私も趣旨には基本的に賛成で、「時間労働で稼ぐのではなく、成果配分で稼ごう」とは再々役員会、経営会議の席でも言ってきたことでありました。
果物の出来具合には表年、裏年があるそうです。当社の営業で言えば、昨年度は裏年、今年度は表年でした。それに春先からCLT事業の本格化が始まりました。設備の完成は12月が押し詰まってからで、夏から秋の繁忙期にはまだ設備新設の恩恵にあずかることができませんでした。昨年夏から年末まで薄氷を踏む工程管理でありました。
事業形態もあります。当社では製材部門は自主的な計画生産が可能で時間外労働の少ない部署です。一方建設関連部門は受注産業であり、自主的生産計画を立てにくい部署です。受注が年間計画に達しない年もあり、オーバーする年もあります。達しない年は労働時間オーバーで悩むことは無い代わりに、支払時期には資金不足に、決算期には業績不振に悩むことにになります。時期的な要素もあり、暇な時期がある替わりには繁忙期があります。計画経済ではない以上ある意味当然でしょう。
残業代未払いや理不尽な残業時間切り捨てを国が取り締まることは当然で、国民の正当な権利を守るためにも、これには是非精励して欲しいと思います。しかし勤務時間数に関しては、民間労使の自由な裁量に任せられないものかと思うことです。
とはいえ労働時間が理由で退職する人も出てきており、国に言われるまでもなく、生産性の抜本的な向上と労働の均等化については真剣に取り組む必要があります。
5.森林の新しい管理
本メルマガでは放置林のことを再々問題提起してきました。全国的にも所有者不明地や放置林のことが話題になり、国の施策として手を打たれることになったようです。
我が国スギ林での森林1ヘクタール当たりの年間生長量は10~15m3と言われています。持続可能な森林を維持するためには、その生長量の半分を年間伐採可能量とするべきと聞いたことがあります。当社は年間5万m3の原木ユーザーですから、7,000~10,000ヘクタールの森林が必要ということになります。
林業と木材加工は車の両輪であり、林業がきちんとしていなければ木材加工の健全な発展はないと考えています。そして林業がきちんとするためには森林の保持がきちんとして、ある程度の管理をしなければなりません。
放置林の解消は健全な森林を守るためにゆるがせに出来ない、今の時期として最重要テーマとなりました。まずは一歩ずつ、会社でも個人でも少しずつ後継者不在の森林を買いとっていきたい。そして広く森林所有者を募って行きたいと考えるものです。
まじめな林業事業体や新たな森林所有者と共に、林業が儲かる事業であり、そのことが持続可能な森林の維持につながることを示していきたいものです。
今年もいろいろなことが出てくることだろうと思います。ひょっとして思いもしないことが起こるかもしれません。皆様のお知恵をお借りしながら精一杯努力して参りたいと思います。
皆様におかれましても、今年が良き一年でありますことを祈念致します。
(代表取締役 佐々木 幸久)